こたちの読書ブログ

19世紀英国文学好きの読書記録

アントニーとクレオパトラ|気まぐれな性格が災いして恋人を破滅に導いた悲劇の女王

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ちくま文庫シェイクスピア全集から

シェイクスピア全集21 アントニーとクレオパトラ (ちくま文庫)

シェイクスピア全集21 アントニーとクレオパトラ (ちくま文庫)

アントニーとクレオパトラ

登場人物が多く、目まぐるしく場面転換していくので中盤はちょっと退屈かもしれない。登場人物の名前はあくまで記号として、物語全体の流れをつかむのが正解なんでしょうか。悲劇であり、純粋な恋愛劇であり、史劇でもありました。この時代の知識があればもっと楽しめたのかもしれません。なかなか解釈の難しい戯曲でした。

ふたりがすでに恋人同士として戯れているところから物語は始まります。訳註によるとアントニーはこの時点で40代、クレオパトラは30歳前後。お互い初恋ではない。クレオパトラは恋多き女性だったしアントニーにいたっては既婚者。

妻帯者が遠征先の現地妻とのあいだに子どもをもうける(史実)。子どもが出来たあと正妻とは離婚したようですが、当時の婚姻制度や浮気に対する倫理観はどうだったんだろう。

シェイクスピアの時代の演劇は全員男性

ja.wikipedia.org

エリザベス朝の演劇では、ジュリエットもオフィーリアもコーディリアも変声期前の少年俳優が演じていました。当然クレオパトラも。女性を演じている少年俳優をさらに男装させたりもしているので少年俳優も大変だっただろうなと(観るほうとしては楽しいですが)。

きんきん声のクレオパトラ役の少年は、淫売のようにしなを作り、私の崇高な威厳を引きずり下ろす。

(『アントニーとクレオパトラ』より|W・シェイクスピア|松岡和子訳)

シェイクスピアの演劇ではよく少年俳優に言及するセリフが出てきます。訳者の松岡さんは解説でたびたび『楽屋落ち』と表現しています。いわゆるメタ発言ですね。

読んでてびっくりしたのが、キスシーンが割とあること。当時は少年俳優が演じること前提で書かれているはず。でも演出しだいでどうとでもなるのが演劇。現代でもあえてオールメールに挑戦している演出家や劇団もいますし。オールメールのシェイクスピア劇、一度は観てみたいですね。