こたちの読書ブログ

19世紀英国文学好きの読書記録

図説ヴィクトリア女王:英国の近代化をなしとげた女帝

f:id:cotachi:20200210001949p:plain

19世紀英国を生きたヴィクトリア女王

図説ヴィクトリア女王:英国の近代化をなしとげた女帝

図説ヴィクトリア女王:英国の近代化をなしとげた女帝

 

 

図説というだけあって、とても資料が豊富。文字の大きさも読みやすい。当時の写真や絵画、風刺画がページをめくるたびに目に入ってきて、読み手を飽きさせない工夫があると思います。

活字だけのページがほぼないんですよね。そこそこ分厚い本なのに読み進めるスピードが普段より速い気がして。「えっ、もうこんなに読んだの?」と驚くことが多かったです。

ヴィクトリア女王の生涯を綴ったヒストリー本ですが、時代背景を知る上での貴重な資料本にもなります。

イギリスという国に興味を持ち始めたのは約1年前。むやみやたらとヴィクトリア朝に関する本を買い漁っていました。当初よりも圧倒的に知識が増えたおかげで、文学小説をストレスなく読破できることが多くなってきました。

恥ずかしながら『大英帝国』の意味をずっと誤解していたようです。せいぜい『偉大なる英国』という意味合いかと……十数年のあいだ勘違いしてました。

『グレートブリテン及び北アイルランド連合王国と英領植民地』のことなんですね。なるほど。

 

ヴィクトリア女王と最愛の夫アルバート

当時の王室は堕落と放蕩ばかりでイメージは地に落ちていました。18歳という若さで即位したヴィクトリア女王は反面教師として王室を立て直そうとします。

ヴィクトリア女王の人生でもっとも影響を与えた人物であり、女王の半生を綴る上で欠かせない伴侶・アルバート公。ドイツの公国出身の王子。自然科学を愛し、公衆衛生を推し進めた知識人。ロンドン万博の成功はアルバート公が大きく貢献していたと言われています。

世間的には国同士の政略結婚という形でした。しかし実際に会ってみると女王は一目惚れ。夫婦は9人の子どもに恵まれました。当時、出産は命がけで死産も多かった時代。9人全員がぶじに生まれてきたのは奇跡に近い。

 アルバート公が亡くなる直前の様子がかなり緊張感のある文章で綴られています。『アルバートはヴィクトリアを認識することもできず、ドイツ語しか話さなくなる』という一文が心に刺さりました。

フランス風のおしゃれなドレスを好んで着ていた女王は、最愛の夫を亡くして以降、生涯にわたって喪服をつらぬきます。アルバート公が使用していた部屋は誰にも触らせず神聖な場所とした、とあります。

愛する人の死はつらいもの。彼女は本当に夫を愛していたんだなって。

 

気になったこと

終章に近づくにつれて家族が増えたり亡くなったりするのですが……同じ名前の人物が多くて混乱します。欧州だと親の名前をそのまま子に継承するのは普通だそうで。ミドルネームまで一緒なことも多い。ヴィクトリアって名前、いったい何人につけてるんだ……。

あと、王室にとって重要なできごともサラッと流してることが多い。これはあくまでヴィクトリア女王の生涯を綴った本なので仕方ない部分もありますね。長男バーティの素行の悪さを小出しにしつつ詳しくは語らないところとか。とても気になります。

 

ヨーロッパの祖母

女王は、好き嫌いがはっきりしていて気に入らない人を遠ざけたり、夫を亡くしてからは塞ぎ込んだりと万能の人ではありませんでした。しかし宗教的な偏見や人種差別がまかり通っていた時代にとても柔軟な対応をとる女性でした。

欧州各地で革命が起こり、王族が衰退していく不安定な時代。女王への暗殺未遂は何度かありましたが、革命が起こるまでにはいたりませんでした。彼女が親類と同じように堕落の一途をたどっていたら、最悪の場合、革命が起こっていたかもしれない。

でもそうはならなかった。女王とアルバート公が王室のイメージを変えたおかげで『理想的な家庭』と評され、平民から慕われるようになりました。欧州各地の王室と婚姻関係を結び、ヨーロッパの祖母と呼ばれるようになったのも、女王の人柄ゆえなのかもしれません。

350ページのボリュームでありながら、まだまだ物足りないなと思うことがたくさんあります。でも本書を読んだおかげで今まで知らなかった方面に興味が持てました。少し手が出にくい値段ではありますが、買ってよかったと思える一冊でした。