こたちの読書ブログ

19世紀英国文学好きの読書記録

八十日間世界一周

ジュール・ヴェルヌの考えたイギリス感

八十日間世界一周 (創元SF文庫)

八十日間世界一周 (創元SF文庫)

 

『十五少年漂流記』や『海底2万マイル』の作者と同じであることを読み終わってから知る。英国文学を推しているくせに初めての感想文がフランス文学とは……。

でも舞台はイギリスからはじまるし、主人公はイギリス人だからいいんです。

小説のタイトルどおり、80日で世界一周できるか? というお話。

1870年代だと蒸気機関車、蒸気船、馬車くらいが移動手段なんだろうなと予想。本をひらくと様々な苦難に見舞われてゾウに乗ったり、ソリで移動したりと予想外の乗り物もありました。

この小説が出版された直後、新聞記者が50日で世界一周に成功したという逸話が解説に載っていました。ジュール・ヴェルヌの考えた気球も潜水艦も当時としてはバカバカしい空想に過ぎなかったけど、のちに実現した。

ヴェルヌは説得力のある文章を順序立てて書き連ねているので一見空想とは思えない。イギリス文化の知識もあるし、作者はイギリス人かと一瞬思いました。

主人公フィリアス・フォッグの特徴

いつ何時でも冷静沈着

どんなトラブルが起きても慌てず、いつもどおり。英国紳士とはこうだという作者の皮肉だろうか。

目的のためなら手段をいとわない

機関車がトラブルで動かないから近所でゾウを買おう! とか、定期船が出航してしまったから個人所有の船を乗組員ごと買おう! とか発想が突飛すぎるうえに気前が良すぎるフォッグ氏。

見た目に反して正義感のかたまり

本来の世界一周の予定を曲げてまで、身代わりとして殺されかけたインド人女性を間一髪で救う。旅の途中で加わった女性と旅を続けるうちに……?

指名手配犯と間違われ、世界一周するあいだ刑事にさんざん追われるハメに(ただしフォッグ氏は終盤になるまで追われてることに気づいてなかった)。怒りをあらわにして鉄拳制裁したのは後にも先にも刑事にたいしてのみ。

堅気な従者パスパルトゥー

 冷静沈着な主人のフォッグ氏とは対照的にどこか抜けた印象のあるパスパルトゥー。主人公の心情はほとんど描写されないのに対し、彼の感情表現はかなり豊富。

どちらかというと読者は主人公よりパスパルトゥーに感情移入してしまうんじゃなかろうか。作者もたぶんそのつもりで書いたよね?彼フランス人の設定だし。

刑事の存在にいち早く気づいたり、機転を利かせて女性を助けたり、ヘマをやらかしてもすぐ挽回しようとする堅気っぷり。世界一周をなんとしてでも遂行せねばと自分の事のように躍起になる。

一次創作に活かしたいこと

もともとこの本を買った理由が「インドの描写があるから」だったんです。1870年代のインドのインフラはどの程度だろうかと。

まあ作者は(下調べはしたにせよ)空想で書いているという前提なので信じすぎるのもどうなんでしょうか。凶悪な少数民族がいるって描写はちょっと信じがたいんですが(いたかもしれない……)鉄道のインフラは本当っぽいので信じます。

世界一周をスピーディにまわるお話だからひとつの国にそんなに割けないだろうなと諦めていたので、けっこうインドの描写多めで満足しています。

ヴェルヌは多作で、ほかにも読んでみたい作品がたくさんありまね。ひとりの作家にこだわりすぎないように読んでいるので、次読むとしたらいつになるだろうな。